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受動を使った敬語表現/Honorific expressions using the passive voice



(Enlish text below)

日本語を学習する上で最も難解な文法の一つが敬語だと思います。敬語には尊敬語・謙譲語・丁重語(最近では謙譲語・丁重語をそれぞれ謙譲語1・謙譲語2などと呼ぶようになっているそうです)があります。これら三つの敬語表現についてはその動詞の選択と活用もさることながら、場面によってどう使い分けないといけないかを理解するのが重要です。1)どのような状況で、2)誰に対して敬意を表しているか、3)そのために誰の行為に敬語表現を当てはめねばいけないのかといった点です。
簡単ではありませんが、この点から敬語について説明した動画を以前作りましたので、確認なさりたい方はまずはこちらをご覧ください。

以上の他に「お金」や「ご飯」というような、名詞に「お」や「ご」をつける美化語と「-です/ます」形を加えて丁寧語とする分類もあります。これら全てをまとめて表にすると次のようになり、私の頭の中でもとりあえずこうなっています。😅

尊敬語 (先生が)待つ→お待ちになる話題中の行為者が上位
謙譲語 謙譲語1 (私が)待つ→お待ちする 話題中の行為者が下位
謙譲語2
(丁重語)
例)こちらでございます。 話し手が聞き手に丁寧に対応する。
丁寧語 美化語 お茶/ご飯 お/ご+名詞
です/ます形 待つ→待ちます 話し手が聞き手に丁寧に対応する。


ところで、去年、私が担当したクラスで扱った文法で「受動を使った尊敬語表現」というものが出てきました。『まるごと 中級1(B1)』の173ページにあります。例えば以下のCのようなものです。
  1. 例文)先生は学校に来ます
  2. 尊敬語)先生は学校にいらっしゃいます
  3. 受動態を使った尊敬表現)先生学校に来られます
  4. 受動)(私は)先生学校に来られます


受動態を使った尊敬語表現と通常の受動文の違いは誰が主語かという点にあります。Cの文では先生に対する尊敬を表し、主語は先生です。逆に、Dの文では主語は私で、例えば、宿題を忘れたといったような理由で「私は先生に学校に来て欲しくない」といったように、何かい嫌なことが誰かによってなされることを表します。

この受動態による尊敬語表現は実際によく使われる表現で、私の感覚では日常会話においては通常の尊敬語表現よりも使われる場面が多いと思います。日常の身近な人との対面場面では前者を、車内や店内でのアナウンス、顧客対応の場合は後者が使われると言っていいかと思います。


15年ほど日本語を教えていますが、実は去年までこの重要な尊敬語表現を教えたことはありませんでした。実際によく使う、あるいは耳にすることが多い表現なので、ここであえて取り上げました。もしどこかで出会った時は敬語表現の一種だなということを思い出して下さい。



I think honorifics are one of the most difficult grammars for learning Japanese. Honorifics include honorifics, humble words, and extra-modest expressions (recently, humble and extra-modest expressions are called humble expressions 1 and humble expressions 2, respectively). It is important to understand how to use these three honorific expressions properly depending on the situation, as well as selecting and conjugating the verbs. It means with other words, 1) under what circumstances, 2) to whom you are showing respect, and 3) to whose actions you need to apply honorific expressions.

It's not easy, but I made a video that explains honorifics from this point, so if you want to check it, please see here first.

In addition to the above, there is also a classification of beautification words "bikago" such as "okane (money)" and "gohan(rice)" which are nouns added with "o" or "go", and the "-desu/masu" forms as the polite expression. All of these are summarized in a table as follows, which is what I have in my head.


Honorific expressions (先生が)待つ→お待ちになるActors in the topic are ranked higher.
Humble
expressions
Humble expressions 1 (私が)待つ→お待ちする Actors in the topic are ranked lower.
Humble expressions 2
(Extra-modest expressions)
e.g. こちらでございます。 The speaker responds politely to the listener.
Polite
expressions
beautification words お茶/ご飯 お/ご + noun
-desu/masu forms 待つ→待ちます The speaker responds politely to the listener.


By the way, in the grammar I taught last year, there was a grammar called "Honorific expressions using the passive voice". You can find it on page 173 of "Marugoto Intermediate 1 (B1)". That is, for example, C below.

  1. example sentence)先生は学校に来ます
  2. honorific expression)先生は学校にいらっしゃいます
  3. the passive voice as honorifics)先生学校に来られます
  4. the passive voice)(私は)先生学校に来られます
The difference between honorific expressions using the passive voice and normal passive sentences is who is the subject. Sentence C expresses respect for the teacher, and the subject is the teacher. In contrast, in sentence D, the subject is me, and it indicates that something unpleasant is being done by someone else, for example, "I don't want my teacher to come to school because I forgot my homework.

This honorific expression in the passive voice is an expression that is often used, and in my sense, it is used more often than usual honorific expressions in everyday conversation. I would say that the former is used for daily face-to-face meetings with people close to us, while the latter is used for announcements in the public space or when dealing with customers.


I have been teaching Japanese for about 15 years, but I had never actually taught this important honorific expression until last year. I dared to bring it up here because it is an expression that we often use or hear in fact. If you come across it somewhere, please remember that it is a kind of honorific expression.

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